HAGI
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萩焼の興り
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熱意を込めて書いています。今しばらくお待ちください。
萩焼の歴史は今から400年以上前の文禄元年(1592)、豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄の役)に遡ります。
安土桃山時代、織田信長、豊臣秀吉は千利休を擁して茶の湯を支配しました。茶の湯が武士のステータスとして発展した事で茶器需要が高まり、その中で書院茶から侘茶へと茶の湯の潮流が傾いた際に人気を博したのが高麗茶碗です。
その後、萩藩の開祖となる毛利輝元が文禄慶長の役の際に朝鮮の陶工李勺光、李敬兄弟を招きます。慶長5年(1600)の関ヶ原の戦いに敗れた輝元は安芸の広島から長州の萩へ移る事となり、萩の松本村に藩の御用窯を開いたのが萩焼の始まりです。
萩焼の特徴
萩焼はざっくりと焼き締まりの少ない土を用いる事により、焼き上がりに柔らかな風合いを感じられるのが特徴です。土が粗いため浸透性・保水性・保温性が高く、土と釉薬の収縮率の違いによりできる表面の細かなヒビ(=貫入)から水分が浸透し、器の中から表面にまで至ります。これにより、使えば使うほど器の色合いが変化し、侘びた風情を帯びてきます。この変化は「萩の七化け」と呼ばれ萩焼の大きな特徴として挙げられる他、萩焼が茶人にとても喜ばれる魅力のひとつとしてもこの「七化け」が挙げられるのです。
3種類の土
萩焼は大道土(台道土)を始め、見島土、金峯土(みたけつち)を使用します。
★大道土(台道土)
萩焼の主要原土。山口県防府市大道から山口市鋳銭司四辻の一帯で採掘され、砂礫の多さやアイボリー色が特徴の粘土。可塑性に富み焼き締まりが少なく、萩焼の基本的な特徴はこの大道土の性質からくる。
★見島土
萩沖45キロの日本海に浮かぶ見島で取れる鉄分の多い赤黒い土。大道土に配合することにより風合いや色彩が多様になり、また、化粧掛けや釉薬に調合して使われることもある。現在では見島から採掘している様子はなく、他の似た成分の土を代用しているとも。
★金峯土
萩市の福井下金峯で採取される細かな砂質の白色土。胎土の粘性を抑える事に加え、耐火度向上の為に配合する。
切り込みの入った高台は…
たまにお客様から「高台に切り込みが入っているのが萩焼の特徴なんでしょ?」と聞かれる事がありますが、どうしてその様な説明が萩焼人気全盛時代に主流となってしまったのか逆に不思議に思っています。なぜならこの手法は萩焼に限らず、また萩焼自体も全ての高台を欠いてあるわけではないからです。
更に付随して「毛利の殿様が庶民が茶器を使う事を許す際に、庶民は下手物の使用なら許すという意味でわざと切り込みを入れた」という説まで浮上するのですが、これにも少し無理を感じます。なぜなら萩焼は高麗茶碗を写すところから始まっており、その高麗茶碗その物に1ヵ所から複数個所切り込みの入った高台の茶碗が存在し、毛利家もその茶碗を写した茶碗を実際に使っていたからです。
その他、切り高台には造形的な視点、焼成効率向上、運搬時の機能性等々諸説ありますが、それらの多くが他の焼き物にも当てはまる為、萩焼だけの特徴と呼ぶ事は難しいと捉えています。
多岐にわたる表現
30年以上前の一般的な萩焼のイメージは、土や釉薬の風合いを生かした素朴なものが多く、絵付けなどはほぼ行われておらず、土の配合、施釉、ヘラ目、刷毛目などに、主に登り窯で焼かれる焼成の際の炎による偶然性を加え、独特の表現を行っていました。その表現の幅の狭さの為か、色彩も枇杷色や褐色、白色などに限られた色で占められた為、玄人眼には力量の差を見極められても、素人目にはその差を見抜けない様な同じ雰囲気の萩焼が多くあった時代でした。
一方、現代ではその範疇に留まらず自由な色やデザインも多く見られる様になり、古典的な茶陶としての萩焼から現代的なオブジェや食器と、表現の幅に広がりを見せてきています。
漏れについて
萩焼の土の特徴は「目が粗い」、「焼き締まりが少ない」などが挙げられ、更に釉薬には「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる細かいヒビが入っている為、水分がヒビから器の中に浸透し、更には表面にまで出てくる事もあります。これが「漏れ」です。
その様な性質から作り手は原則、体に無害な漏れ止めを施してから販売を行いますが、漏り止めから長期間経つとその効果が薄らぐ事があります。そういうものを購入した場合は漏れて驚く事もあるかも知れませんが、プロでなくても御家庭で漏れを防ぐ方法がいくつかあるので後ほど御紹介します。
漏れる器も繰り返しお茶を入れて使用すると、土の目の隙間が徐々に茶渋で詰まって漏れなくなってきます。それと同時に茶渋の色が器に入り、器全体の色が変わってくる事を「萩の七化け」と呼びます。茶道の世界ではこの七化けの現象を「育てる」と表現し、萩焼はお茶を点てるごとにすごい早さで変化する事から「育てる楽しみ」も含めて茶人に愛されています。
それでは以下、漏れ止めの方法です。萩焼だけでなく似た様な性質の焼き物全般に使える方法ですのでぜひお試し下さい。
★おもゆ(フノリやカタクリでも可)を萩焼に入れ、1日程度浸透させます。十分浸透したらしっかりと水洗いし、食器棚の様な暗い所にしまわずに風通しの良い場所で完全に乾燥させます。それでもまだ漏れる場合はこれを何度か繰り返して行ってみて下さい。ゆっくりですが止まっていくものがほとんどだと思います。またこの方法での漏れ止めは、安全且つ萩焼の風合いも損ないませんので、経年変化を大事にされる愛陶家の方も安心してお試し頂けます。
○ おもゆ 少量のお米かご飯に10倍前後の水を入れて煮たたせ、糊状にする。
○ フノリ 板ふのり(文具店などで販売)を水で煮、糊状にする。
○ カタクリ 水溶き片栗粉に熱湯を注いでとろみをつける。
※注意 たまに表面からは見えない大きな隙間があり、何をどうしても漏れてくる場合があります。この場合は欠陥の場合がありますので、遠慮なく買われた店舗か作り手にお問い合わせ下さい。